ゆきとかぜとうみ

何かもそもそ書いてます。☆感謝。

或る新人の噺・1

その新人の名はヤマダ(仮)。
アルバイトで働いていたのが、上司に氣に入られてそのまま社員になった。


いつまでもバイト氣分が抜けず、バイト並の仕事しかしない。
お局社員の小言にいちいちふてくされる。
不祝儀袋の書き方も知らない。 
常連クレーマーのはけ口になっていたのは、だいたいヤマダだった。


「使えない」
誰もがそう思っていた。
「アルバイトだったから許されたのだ」
こうも、思っていた。


それでも、仕事は休まなかった。
寝坊をしても怪我をしても、職場にだけは必ずやってきた。
ある時は血だらけで職場に現れ、上司に病院に連れていかれたこともある。
「転んだんすよぉ」
とヤマダは笑っていたが、どういう転び方をしたらあんなに血だらけになるのか。
というか、そういう時は病院が先だろ。


「ヤマダは辞めました」
朝礼で上司がそう告げたのはその夏の終わり。
確かにそれきり、ヤマダは来なくなった。
血だらけになっても職場にやってきたヤマダが、だ。
何故辞めたのか理由は伏せられたまま、
ヤマダは忽然と職場から、そしてこの町から姿を消した。


ことになっていた。



※一部脚色してます。
そして続きます。


今週のお題「印象に残っている新人」