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ゆきとかぜとうみ

何かもそもそ書いてます。☆感謝。

或る新人の噺・2

お題 つらつら

前回までのお話
http://yukikazeumi.hatenablog.jp/entry/2016/04/01/235850

ヤマダ(仮)が姿を消した理由を、上司はしばらく口にしなかった。
ヤマダは、時々不確定的に発生する“ちょっと長居が過ぎた他所者”のひとりだった。
この町にやってくる若者は、ある時期を過ぎるといつの間にかいなくなってしまうから、
ヤマダも時期は他の奴と少し違ったけどやっぱりそうだったのだ、と、
口には出さないけれど皆思っていた。


この町は小さい。


「ヤマダは辞めました」
と上司が告げてから数週間が経ったある日、
ヤマダの身内を名乗る人間が、ヤマダの私物を取りに職場に来た。
この時初めて、上司以外の職場の人間の多くは、ヤマダの身に降りかかった出来事を知る。


ヤマダは事故に巻き込まれたらしい。
そしてこれはもう少し後になってわかったことだが、その事故には、社員の親族が絡んでいた。
その親族というのは、『この手の話題で絶対ニュースになってはいけない』職種の人だった。
小さい、町だったから。


新聞にそれらしい記事が出なかったのも、上司がほとぼりが冷めるまで黙っていたのも、
おそらくそのことが背景にあったからだと思うし、
私が“この町”を離れて久しいにも関わらず、こうして一部脚色しながら曖昧に書いているのはそのためだ。
こんな小さな落書きからそれが暴かれるのは、今の私の本意ではない。



“印象に残っている新人”というお題を見た時、
真っ先に思い浮かんだのはヤマダのことだった。
年が近くて、同じ“他所者”だったから、
話す機会は少なくても何となく通じるところがあったのかもしれない。
職歴は私の方が長かった(ほんのちょっとね)とはいえ私は辞めるまでずっとアルバイトだったから、
ヤマダのことを“新人”ってくくるのは少し違う氣もするのだけど。


あの時一緒に働いていた人たちの中に、
ヤマダや私のことを覚えていてくれる人が果たしてどれだけいるのだろう。






思いのほか長くなりました。
お付き合いくださってありがとうございます。


今週のお題「印象に残っている新人」